生命・環境科学部 臨床検査技術学科 生化学研究室 曽川一幸先生
特定の食べ物を摂取することにより免疫システムが過敏にはたらき、体に不利益な症状が現れるのが食物アレルギーです。その原因となるのが食物に含まれるタンパク質で、ヒトによってさまざまなタンパク質に反応し、アレルギー症状が出ます。
ただし、こうしたアレルギー反応は、食べ物を生の状態で摂取したときに発症しても、煮たり焼いたり、加工して食べれば発症しない場合もあります。
立体構造をしたタンパク質は、加工などをきっかけに形が変化する非常に不思議な物質です。臨床検査技術学科・生化学研究室では、さまざまなタンパク質を解析し、診断マーカーの探索・臨床応用することで、食物アレルギーなど身近な病気の治療に貢献することをめざしています。
また、生化学研究室の特長といえるのが、学部生の2年次6月から研究室に所属し、4年次3月までじっくり時間をかけて研究に取り組める点です。研究テーマに関しても、基本的に学生が望むもの自由に探求することが可能で、たとえばキウイフルーツに含まれアレルギーの原因となるアクチニジン、ユニークなところでは日本でも報告例が非常に希少なミカンによるアレルギーについて研究する学生もいます。
さらに4年次には、2年間の研究の成果を研究会・学会で、学部生が自ら発表するのも当研究室ならではです。2019年に開催された第44回日本医用マススペクトル学会年会においても、「ブラックタイガーの新規アレルゲンタンパク質解析」をテーマとした発表が行われました。
食物アレルギー以外にも、すい臓がんや胆管がんなど、消化器がんの新規早期診断マーカーの開発・研究でも実績があります。
たとえばすい臓がんは、治療が難しいがんの代表例です。人間ドッグなどでマーカー検査は行われているものの、早期にはきわめて発見しにくく、発見した時点では症状が進行しており、手術を行っても成功率が非常に低いのが現状です。
そこで生化学研究室ではこうした状況を打破するため、大学病院と共同で研究を進めることにより、実際のがん患者の血液を使った実践的な研究を推進。臨床検査試薬メーカーとも協同することで、新たな早期診断マーカーの商品化を目指している。