獣医学部 動物応用科学科 食品科学研究室 坂田亮一先生
動物そのものを学ぶ分野のほかにも、彼らからの贈り物である肉や乳、卵を、私たち人間がどのように利用し、安全で豊かな食生活を守っていくのかをモットーに研究していく、動物資源利用の研究分野が食品科学です。そして、実生活に結びついた学問分野として、自分たちの手で食べ物をつくり出すおもしろさを実体験から学んでいくのが、食品科学研究室です。
「にゅう肉組」の愛称でも知られる同研究室への入室が決まったら、まず取り組むのが、学内の食肉加工場施設でハム、ベーコン、ソーセージなど、食肉製品の製造技術を学ぶ実習で、食肉加工のスキルを身につけながら食品に馴染むプログラムが実施されます。
その後も、月1回のペースで定期的に製造実習を行っていきますが、大きな枝肉の解体から塩漬、燻煙、加熱、冷却などの加工といった、すべての作業を一貫して行いながら、食肉のおいしさと機能性を学んでいくプログラムは、学生たちからも非常に好評です。
学生のほとんどは食肉製品の製造は初体験ということですが、自分たちの口に入るものを自分たちの手でつくりだす実践的な食育を、大いに楽しんでいます。食育推進など社会活動にも積極的に参加していて、国際食品工業展への出展のほか、相模原市農業まつりに参加した際には本格的ドイツソーセージのホットドッグを出展し、評判となりました。
また、学術的な研究テーマとしては、食肉製品の発色剤をいかに低減化し、安全な食品を供給していくことをリサーチの出発点に、さまざまな動物性食品に関する研究を行っています。最近では、食肉摂取による心理効果や健康増進へのはたらきなど、心理学を取り入れた研究も実施しています。
肉を食べることで得られる幸福感や抑うつ効果などに着目した、いわば"ミートセラピー"についての研究は、今後、さらなる発展が期待されています。そのほかにも、食害獣として問題になっているシカやイノシシなど、野生動物の肉を用いたソーセージ、ハム、ベーコン、ジャーキーなども試作中です。
天然由来成分には、食肉製品の保存に有効なものがあります。一例として落花生が、その抗酸化作用によって食肉製品の脂質酸化を抑え、食肉製品の品質向上に貢献していることが研究によって明らかになりました。
また、乳酸菌を主とする微生物の発酵を利用した発酵動物性食品についても研究を行っています。昔から、発酵食品は健康に良いさまざまな効果をもたらすことが知られていますが、その効果・メカニズムについて科学的な視点から解明していきます。