伊藤 勇ノ進
神奈川県立相模原青陵高等学校(現・神奈川県立相模原弥栄高等学校)出身
食品加工実習室
班ごとに分かれ、この調理台で加工食品を作ります。器具から台まできれいにしてから終了です。
上の2段がオーブンで、その下にホイロが付いています。ホイロとは、パン生地を発酵させるときに用いる保温装置を指します。
4年次の「食品加工学・保蔵科学実習」で使います。「食品学」「食品衛生学」「食品加工学・保蔵科学」の講義で学んだ理論に基づき、実際に加工食品を作りながら原料処理、加工・殺菌方法・保蔵方法などの食品加工技術を学び、食品素材が持つ加工特性を知ることができます。同時に、
データサイエンスは、さまざまな意思決定に必要となるデータを科学的にまとめ、伝える技術です。食の専門知識を組み合わせることで食の情報を科学的に理解し、データの価値を飛躍的に高めることが可能となります。本学では、食・栄養分野に特化したデータサイエンティストの育成を国内の他大学に先駆けて始めています。
提示されたデータについて、栄養学・微生物学・疫学などのあらゆる観点から考察し、科学的根拠に基づいて検証・評価することを心掛けました。例えば、発表済みの研究レポートであっても、筆者の主観や意図が含まれていないかどうかを検討する、ということを行いました。このような視点は、自分たちが実際に行った実験結果にも応用できました。
食品を扱う業者は、食品衛生法の改正を受けて、2021年から「HACCP*」による衛生管理をしなければならなくなりました。本学では、国内の他大学に先駆け、2019年から一般財団法人食品安全マネジメント協会(JFSM)の承認を受けたHACCP研修(食品安全研修)を行ってHACCPに習熟した人材の育成を強化しており、卒業生が即戦力として食品業界で活躍しています。さらに社会人へのリカレント教育や農林水産省より依頼を受けたベトナムでのHACCP人材教育も行っています。
*HACCP(ハサップ)とは「Hazard Analysis and Critical Control Point」の略称です。食品を製造する際に工程上の危害を起こす要因(ハザード; Hazard)を分析しそれを最も効率よく管理できる工程(CCP; 重要管理点)を連続的に管理して安全を確保する管理手法で、NASAで宇宙食を製造する際に考案されました。
実際の講義で使用されているテキスト
カリキュラムを履修して試験に合格すると授与されます。
2021年からのHACCP完全義務化に先駆け、本学では既にHACCP研修を開催しており、2019年以降3年間で301人(リカレント5人、ベトナム39人を含む)が研修を修了しています。私は講義や実習を通して関連する知識や技能を得ていますが、4年次に行われる「HACCP管理論」の内容はJFSMの承認を受けたものであることから、大いに期待しています。
HACCPによる衛生管理の義務化が始まったのは2020年からですが、その前から麻布大学の食品生命科学科ではHACCP人材を育成する専門科目がカリキュラムのひとつに設けられていました。この授業を履修して試験に合格すると、卒業と同時に修了証をいただくことができます。こうした本学科独自の制度に魅力を感じ、入学を決めました。
そもそも私が食の安全を意識し始めたきっかけは、高校時代にかかってしまった食中毒にあります。「この先は徹底して食中毒を防ぎたい」という切実な思いから、積極的に食品衛生について調べるようになりました。食中毒を完全に予防しようという目的で、原因となる細菌やウイルスの種類に始まり、発生のメカニズムまでを詳細にみていきました。やがて「食の『安全』について詳しく学びたい」という思いが高まり、たどり着いたのが本学科でした。
この学科には、食における「情報」「機能」「安全」といった3つの学びがあります。私が最初に着目したのは安全面でしたが、それを裏付ける話を本学科の先生から聞いたことがあります。食品生命科学科の前身は1965年に開学した「麻布公衆衛生短期大学」であることからも、公衆衛生――すなわち人々の健康を守るための食の安全をしっかり学べる土台があると、先生はおっしゃっていました。
本学科のカリキュラムでは食の情報・機能・安全のうち、特に興味のある分野を中心に学ぶことができます。しかし、私の場合は安全面のみならず、機能面や情報面も含め、広く満遍なく学びたいと思うようになりました。機能の分野においては食品に含まれる成分のほか、有害性・毒性がある物質や生物が人体にどのように作用するのかを理解しておく必要があります。そのためには本学科の科目「基礎生物学・同実習」をはじめ、「解剖組織学」「生理学」などを学ばなければなりません。また、さまざまな物質の分析・評価に欠かせない「有機化学」「機器分析学」「生化学」などの学びも必須となります。そして情報の分野では、データを正しく読み解くため「基礎生物統計学」「公衆衛生学」「疫学概論」などもベースとなります。食のエキスパートをめざすからには、以上の科目を避けて通ることはできない、というのが私の考えです。
本学の必修科目はどれも充実しており、学べば学ぶほど面白いものばかりです。座学に限らず、自ら体験して身につける実習もあります。実習では、座学で得た知識をさらに深め、定着させることができます。私の例でいえば化学があまり得意ではなかったのですが、実習を通して「極性」というものを理解できました。手を動かしつつ考えたり、実験の条件を少し変えてみたりすることで、教科書には載っていないことまで深く知ることができました。
普段の実習はもちろん、所属する研究室での活動を通して、私の最大の関心事は「実験」だと認識できました。現在研究室で行っている実験では思い通りに進まないこともありますが、「なぜこの結果が出るのだろう?」と自問し、先生と話し合いを重ねることにこそ、実験の
本学科を卒業する学生の進路先は、食品メーカーなどの食品関連企業が多いですが、そのほかにも製薬会社や検査センターなど、実に幅広いです。入学した入口はひとつでも、幅広く、深く学んでいくうちに、出口はいろいろな方向へと広がっています。また、この学科での学びは、企業のさまざまな部署で役立つと思います。食品メーカーを例に挙げると、商品開発部では栄養やおいしさなど食の機能面を生かせますし、企画部では消費者ニーズの掘り起こしに欠かせない食の情報面が役立ちます。また、品質管理部や検査部では、当然ですが食の安全面における知識が求められます。
この学科では知識や教養にとどまらず、社会が求める実践力も身につくよう、私たち学生を育てています。「食の分野に興味があるけれども、具体的な将来像がまだ描けなくて......」と進学先を迷っている方には特に、この学科を心からお勧めします。食品生命科学科での学びを通して将来に役立つスキルが高まり、卒業後の道が開けるはずです。
中華まんコンテスト受賞作品
東葛食品株式会社(千葉県鎌ケ谷市)の協力を得て、中華まんコンテストを実施。
データロガー
針の先端を食材に刺し、食品の温度を把握。HACCP管理には欠かせないアイテムです。
高速液体クロマトグラフィ(HPLC)
食品の生産・加工・保存の仕方で変化するうま味成分(グルタミン酸、イノシン酸)などを分析しています。