麻布大学

対談 STUDENT × OG Vol.001

良い獣医師を育てる実力主義良い獣医師を育てる実力主義

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麻布大学卒業後、北米に渡り、専門医として活躍する新井史織先生。
獣医師をめざす学生を代表して、獣医学科の森亮磨さんが
日本と北米の教育の違いなどについてうかがいました。

日本と北米の学生の違い

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 新井先生は現在どのように働いているのですか?

新井 現在は、ミネソタ大学臨床学科の准教授、小動物外科医として58%が診察、42%が講義、実習、研究という契約です。レジデント、インターンや学生と一緒に働いています。

 私も小動物を診ることができる獣医師をめざして、麻布大学に進学しました。

新井 北米ではチャレンジするかしないかを決めるのは学生で、指導者はサポート役。質問や相談を受けることも多いのですが、たいていは「やってみたらどう?」と背中を押してあげるのが私の役割です。決して怒ったり、否定したりはせず、その学生の良いところを見つけて、伸ばそうとします。最初はそのやり方にとまどいましたが、私にはその方が合っているなと感じました。そして、そういう空気は麻布大学にも共通する部分です。学生はみんな平等で、学生であっても附属動物病院の手術室などで、積極的に学ばせてもらうことができました。当時から海外の実力主義に似ているなと感じていましたが、アメリカに留学してからより強く思うようになり、それは麻布大学の素晴らしい魅力だと思っています。

 私も獣医放射線学研究室や附属動物病院の腫瘍科で手術の手伝いなどをして、積極的に学ばせてもらっています。

麻布大学での学びが今に生きている

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 麻布大学で学んだことが、今生きていると感じることはありますか?

新井 実習にしても講義にしても、麻布大学で学んだこと、身につけたことは、実際に獣医師になったときに役立つことがとても多いです。教えてくださった先生方も、皆さん日本だけでなく、海外での経験も豊富な素晴らしい方々でした。研究室での実践的な指導のおかげで、今の獣医師としての自分があると思っています。

 私も自分の研究室での授業で、X線や超音波の機械を実際に使って学ぶことがあるのですが、先生から「学生がこんなに本物の機械を使って学べる学校はなかなかないよ」と言われました。そういった実践的な指導は、手技を身につける絶好の機会ですし、獣医師になったときに役立つのではないかと感じています。

新井 麻布大学では自分がやりたいと思うことは、どんどんやらせてもらえて、たくさん勉強する機会を与えていただきました。できなければ厳しく指導されることもありましたが、努力してできるようになれば、それを認めて評価してくれる環境でした。学生一人ひとりが目標に向かって上達できるように、いつでもサポートをしてくれるという雰囲気が麻布大学にはありましたね。

 学生がやりたいことをどんどんやらせてもらえるという雰囲気は、今も同じです。

新井 それは麻布大学の伝統として、これからも続いていってほしいですね。

専門医資格取得に必要なもの

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 将来は専門医の資格取得も視野に入れています。もちろん今は、日本で良い獣医師になることが一番の目標ですが、いつかは海外で専門医をめざしたいという夢を持っています。

新井 私自身は専門医を取得して良かったと思っています。今、動物の医療はいろいろと変化をしていますが、その中で全部を診るというのはとても難しいことです。皮膚科や眼科も経験しましたが、そこで自分がスペシャリストになることはできないと感じましたし、私には外科が合っている。手術室にいるのがすごく好きなんです。その点で専門医の資格取得をしたことは、とても良かったと感じています。

 専門医資格取得のためにはどんなことが必要でしょうか?

新井 専門医になるためにはまずは基礎をしっかり身につけることです。臨床の基礎をしっかり磨くことで、どんな症例にも臨機応変に対応できる臨床医になると思います。基本的なことは日本と海外でほとんど違いはありませんので、基礎をしっかりしておけば、専門医になっても困ることは少ないと思います。

獣医師国家試験対策

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新井 私のときは仲間同士でかなり助け合った記憶があります。お互いに質問をして、わからないところを埋めていくというやり方でした。本当にたくさんの友人に助けられたものです。

 そうですね、先生からもひとりで勉強しないほうがいいと言われます。それぞれ得意不得意がありますから、お互いの知識を共有しながら試験対策に励んでいますが、人のつながりの大切さを感じます。獣医学科はみんな仲がいいので、わからないところを気軽に聞くこともできますし、それでもわからないときは、先生に聞きにいけば、いつでも丁寧に教えてくれます。総合獣医学という授業では、国家試験対策もしてくれるので、とても役立っています。

獣医師としてめざすもの

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 新井先生はどんな人が獣医師に向いていると考えていますか?

新井 いくつか条件はあると思いますが、第一に優しくて思いやりのある人。動物が好きだという気持ちは基本として、動物に対しても飼い主さんに対しても、誰かのために働くという思いやりの精神がとても重要です。そのためには、精神的にタフでなければいけないとも思います。それにもう一つ付け加えるなら体力ですね。私自身で言えば、思いやりはまだまだ足りない部分で、これからもっと身につけていかなければいけないと考えていますが、精神的な部分は麻布大学で大いに鍛えられたと思います。森さんは将来、どんな獣医師になりたいと考えていますか?

 麻布大学で腫瘍について学んできたので、将来はそれを専門にしていきたいと考えていますが、獣医師になっての当面の目標は、幅広くすべての科を診られるようになることです。そして飼い主の方に、一番良い治療を提案できるような獣医師をめざしたいです。 

新井 私はまだ専門医になって日が浅いので、まだまだこれから学ぶべきことがたくさんあります。これまでは外科全般を診てきましたが、今後は専門を絞っていくことになると思います。また、恩返しをしたいという気持ちが強いので、教育にも力を入れていきたい。日本でも北米でも、良い獣医師の育成に携わっていけたらと考えています。

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